project: 大学院2年次生 修了研究
client: ー
design: 修士研究、キネティックアート
本研究では、まずアートにおける「動き」を取り入れた造形表現について調査を行い、その領域自体への理解を深めると同時に、今まで広範囲であったその領域内を作品例の分析に基づいて分類した。更にその例の中から、特に自身の制作の掘り下げに有効であると考えたテオ・ヤンセンについて深く調査・分析し、彼の作品および背景等の考察から、自身の修士作品へと展開した。
調査の中で、テオ・ヤンセンが求め続ける「動き」は、彼自身が持つ生物への関心やプロセスの創造等の考えが複雑に影響した結果であり、彼にとって作品が動くことはそこに生命が宿っていることを意味していると分かった。そして、作品の動きをより理想の動きへと近づけるため、実際の生物の理論や動きのシステムを研究し反映させていることが、彼の作品における単なる「動き」を超越した独特な生命感に繋がっていると考察することが出来た。
以上に基づき修士制作では、自らの探求したい動きを実際の生物へと投影し、それらの構造等を参考にすることでより生物らしい動きを作り出そうと試みた。 さらに、素材の特性を活かした動きを追求するため、試作と実験を繰り返し行った。そして、その動きを発生させる方法として鑑賞者の接触を取り入れることで、独自の「動き」の要素を持った作品を構築し、キネティックアートの領域における新たな表現として修士作品「さわってうごかすキネティックアート:オテヲフレテミテ」を完成させた。
提案の際には、あたかも作品が実際の生物であるかのような架空の物語を設定している。そうすることで、構造や色、動きなどの全てのビジュアルに背景があると鑑賞者に植え付けることができる。そしてそれがより「生きもの」としての空気感を増幅させ、自然と「動き」に生命感が宿るのである。
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